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24Vアダプタ仕様のぺるけ式バランスアンプを作る(1) ~LTspiceによる設計~ [ぺるけ式FET差動バランスアンプ]

久し振りに更新。

秋以降は研究や修士論文で精神的余裕がなく完全にブログを放置しちゃってましたがオーディオネタは色々増えてたので今やっているアンプ設計の記事の合間にちょこちょこ書いて消化していこうと思ってます。



本題は以下から。


研究発表を終えてから社会人になる前のこの1ヶ月弱で

「beyerdynamic T1専用のバランス型ヘッドホンアンプの自作」

をやりたいと思っていたのでブログ更新のリハビリも兼ねてアンプを設計製作しながらちょこちょこ記事にまとめていく予定です。


作成することになった経緯は以下の通りです。(※茶番です)

・研究のストレスで魔が差したのか欲しかったbeyerdynamic T1を買ってしまう
⇒おお!音が素晴らしい!さすがフラッグシップモデル!
⇒ん?ネットで調べてみたらバランス化するともっといい音になるらしい!
⇒バランスアンプ欲しい!金もないし電子工作もしたい!
⇒だったら安価にぺるけ式バランスアンプを作ろう!
⇒なになに?ぺるけ式アンプは68Ω程度のインピーダンスのヘッドホンに最適な設計みたいだぞ・・・
⇒だったら電源電圧を上げて600ΩのT1専用のアンプを作ろう!
⇒とりあえず試作1号だし電源回路まで作るのは金がかかるし面倒そうだなぁ・・・
⇒だったら使ってなかったfi.Q用の24Vアダプタを流用しちゃおう!



といった感じで欲望(笑)が抑えきれなくてT1を買ってしまい、バランス駆動の音も聴きたくなってしまったのでぺるけ式ヘッドホンアンプを自分で定数変更にチャレンジしてT1専用のアンプを作ることにしました。

ぺるけ式FET差動バランス型ヘッドホンアンプについては以下のURIを御覧ください。
http://www.op316.com/tubes/balanced/balhpa.htm


半年以上前にぺるけ式FET差動ヘッドホンアンプを作成した際には非オーディオグレード部品で作ったアンプとオーディオ用部品で作ったアンプを比較したりしていましたが、予想以上にお金がかかってしまいました。

今回は回路定数も自分で変更するということで手探りな部分が多々あるため、まずは安価な部品で試作機を作ってみることにしました。うまくいったら後日改めて部品や回路に工夫をこらしたものを作ろうと思います。





では前置きも終わったので回路設計についてです。


回路定数を変えて動作を確認しなければならないのでまずはLTspiceを使ってオリジナルの回路での動作を確認し、ぺるけ氏のアンプ解説ページ等を見ながらあーでもないこーでもないとLTspiceと1週間弱格闘しました。まだまだわからないことが多いのですがやっと試作しても問題なさそう(※根拠の無い自信)な回路が出来上がり、部品の注文までこぎつけました。



キャプチャ2.png
<クリックで拡大します>

今回は試作機ということで回路構成はオリジナルの回路( http://www.op316.com/tubes/balanced/balhpa.htm )からほとんど変更せず、主に定数の変更を行いました。


大きな仕様変更としては

・24Vアダプタを使って電源電圧を24Vまで引き上げる(実測23.8V)
・電源回路にトランジスタによる簡易リプルフィルタを追加する(図の左側)
・初段増幅部のドレイン電流を多めに流す
・定電流回路をカレントミラー回路からNFB回路?に変更する
・仕上がり利得を減らす
・出力インピーダンスを少し下げる

などです。


本当はダイヤモンドバッファのアイドル電流をもっと多めに流そうと思っていましたが電源電圧を24Vまで引き上げたことによりトランジスタの発熱が増えてしまったのでアイドル電流はオリジナルよりもやや増やした30mAとしました。T1のインピーダンスが600Ωもあるのでアイドル電流は30mAあれば実用上の音量でAB級動作になることはなさそうです。

また、電源電圧の引き上げとドレイン電流を多めに流すことで最大出力アップと歪率を改善を試みました。どちらも欲張って引き上げを行っているためトランジスタや抵抗の発熱が増えました・・・どれも定格の1/2~1/3以下ですがやはり発熱が若干不安です・・・静的な動作解析では問題なさそうですが実際に信号を入れた際にどれぐらい発熱するかをあまり考えていないという・・・

仕上がり利得を減らしたのはバランス駆動のアンプが通常のアンプよりも利得が2倍になるためです。接続する予定のDACのバランス出力も2Vrmsを想定しており、ボリューム調整のことを考えて利得を下げました。今回の設計値では利得はおよそ1.15倍です。バランス駆動なのでヘッドホンにはその2倍の電圧がかかるはずなので音量不足になることはないと予想してます。(もしかしたらDX50の1.5Vrmsの出力だと厳しいかも・・・?)




2014年3月13日追記******************************************************************
バランス入力の場合は利得が大きいですが、DX50の出力などのアンバランス入力を入れた場合は利得が2倍にならず1.15倍のままなのでもしかしたら音量不足の可能性あり。

また、帰還抵抗を120kΩから56kΩ(図のR19,R20)に下げるとアンバランス信号を入力した際の歪率が結構上昇しました。このことからバランス入力オンリーで使うなら利得は下げてもいいがアンバランス入力オンリーで使う場合は利得を上げる必要があることがわかりました。とは言っても1V出力未満ではそこまで歪率が大きいわけではないので実用上はそこまで問題にはならないと思います。
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定電流回路をカレントミラーからNFBに変えたのは単にシミュレーションしてみてNFBの方が歪率が少し低かったからという理由です。カレントミラーの方が低電圧で駆動するようですが初段JFETの共通ソース電位の変動もほぼないようですし定電流特性はNFBの方がよさそうだったので変更しています。この辺はまだ自分でもよくわかっておりませんorzきちんと勉強が必要です・・・

出力インピーダンスに関しては正直エミッタ抵抗を2.2Ωまで下げる必要はないと思いましたが今後このアンプをカスタムIEMで使用することもあるかもしれないので2.2Ωまで下げることにしました。



以下実際にシミュレーションしてみた時の波形です。

キャプチャ5.PNG
赤:Hot入力、水色:Cold入力、緑色:Cold出力、青色:Hot出力

動作時の入出力波形で1kHzの正弦波を入力しています。

利得が1.15倍程度なのでほとんど増幅はしていません。オペアンプだと利得が少なすぎても高すぎても回路が不安定になるとか聞いたことがありますが、この回路だと利得が少なくてもシミュレーション上では安定した動作をしています。実際に作って不安定になって利得を上げることになっても抵抗を2本変えるだけですのでまずはこれで作ってみようと思います。

また、この回路は反転増幅回路になっているので作成する際に接続を逆にしてしまわないように注意する必要がありそうです。


キャプチャ4.PNG

これは上記のCold出力の波形をFFTにかけてみたものです。FFTの方法や条件によって傾向が色々変わってしまうようで適切なFFTができているかはわかりませんがこの結果によると1V出力時の高調波は4次ぐらいまで出ているようです。


シミュレーションの際に別に.fourコマンドを用いてこの回路のTHD(THD+Nではない)を計測して結果が以下のログです。条件は上記と同様1V出力です。

N-Period=1
Fourier components of V(coldout)
DC component:-9.21406e-005

Harmonic Frequency Fourier Normalized Phase Normalized
Number [Hz] Component Component [degree] Phase [deg]
1 1.000e+03 9.946e-01 1.000e+00 179.86° 0.00°
2 2.000e+03 5.689e-05 5.719e-05 82.38° -97.48°
3 3.000e+03 1.134e-05 1.140e-05 -169.32° -349.17°
4 4.000e+03 3.725e-07 3.746e-07 11.17° -168.69°
5 5.000e+03 3.222e-07 3.240e-07 0.76° -179.09°
6 6.000e+03 2.535e-07 2.549e-07 -0.31° -180.16°
7 7.000e+03 2.153e-07 2.165e-07 0.19° -179.66°
8 8.000e+03 1.894e-07 1.905e-07 0.22° -179.64°
9 9.000e+03 1.703e-07 1.712e-07 -0.07° -179.92°
Total Harmonic Distortion: 0.005832%

この結果はノイズを考慮していないのでぺるけ氏が実測した数値と単純比較はできませんが電源電圧を24Vまで引き上げたおかげで出力を上げた際の歪率がオリジナルよりも下がっているようです。これならハイインピーダンスのT1でボリュームをかなり回しても音が歪みにくいと思います。

また、THDが0.1%に達した際の出力電圧が6.4Vでした。これならT1で爆音レベルの音量を出しても余裕だと思います。


キャプチャ6.PNG

最後に周波数特性です。
ゲインをオリジナルの2.3倍から半分以下の1.15倍にしたことで周波数帯域が伸び、100kHzから400kHzになりました。これによる音質変化があるかは謎ですがどちらにしても十分な特性だと思います。


上記の通り電源電圧を上げたことによる素子の発熱が若干不安ですが、一応この回路で試作1号を作ろうと思います。
今は足りない部品を注文して部品待ちなので来週末ぐらいには作り終えたいところですね。

使用した部品やかかった費用などは次回の制作後の記事で書こうと思います。


それと、T1購入のみならず、ES9018搭載のDAC基板も組み上げて音出しまでできているのでそちらの記事もT1のレビュー記事同様近日中に書こうと思います。3DDは・・・ちょっと気に入らなかったので多分書きません(汗)
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